天摩山(チョンマサン/812.4m/京畿道)

1970年代及び1980年代初めにギターを担いで京春線に乗ったことのある中年層であれば、昔の磨石駅の風情を覚えているであろう。風呂敷包みを背負った長蛇の列が、磨石駅からどこかへと向かっている光景を。その最終目的地は大多数が天摩山であった。天摩山はそのように昔から首都圏市民の人気を独り占めしてきた山なのである。

鉄馬山(チョルマサン 786.8m)は天摩山ほどの人気は得られなかったものの、天摩山と鋳錦山(チュグムサン 814m)をつないで縦走すればその力強い山容と優れた眺望に感嘆するほど、立派な山容を誇る山である。

南北に伸びたこれらの山は、その谷間の入口にアパート団地などが密集しているが、ひとたび谷の奥へ足を踏み入れると自然そのままの美しい姿が残っており、鬱蒼とした森の中に清らかな水が流れる沢が伸びている。また、たおやかでありながら力強い山容と合わせ、首都圏東側と京畿道北東部一円の山峰を一目で見渡せる素晴らしい眺望を誇っている。

天摩山はその知名度に比べると登山道の数はさほど多くないが、(ホピョンドン)や和道邑(ファドウッ)の(ムッキョルリ)、(カゴンニ)一円にアパート団地が造成されたことにより、新たに多くの登山道が整備された。指定登山道としては、のサムシン修練場登山口からのコースと登山口からのコースがある。そのほか、管理整備は行き届いていないが、梧南邑(オナムッ)の八賢里(パリョルリ)登山口からのコースと、旧46号線道路上の馬峙峠(マチゴゲ)登山口からのコースがある。

ソウル近郊において、天摩山と鉄馬山を結ぶ稜線ほど奥深くひっそりしているところは珍しい。縦走は天摩山から鉄馬山方向へ向かったほうが登り区間が少なく比較的楽である。天摩山の山頂から鉄馬山へ向かい最初の鞍部に着くと、名もないピークを間に置き、登山道が2方向に分かれる。右の登山道は光寺(ポグァンサ)や北東稜~林道方面へと向かうが、飲料水源を保護するため立ち入りを控えるよう案内板に書かれている。それゆえ、ここは左のトラバース道へ進む。

鉄馬山は、その山頂のみに登るというよりも、天摩山や鋳錦山をつなぐ縦走登山として登ることが多いが、ソウル近郊では珍しくひっそりとした雰囲気を味わえる山である。南北に伸びた稜線の東側には、秘琴沢(ピグムケゴッ)をはじめ、秀麗な山々に囲まれた水量豊かな沢がいくつもあり、夏の避暑地として知られている。
<月刊「山」 全国名山地図帳解説より>

<交通(2010515日)>
06:30 清凉里乗換センター出発(330-1番バス)
08:15 鉄馬山登山口到着
12:26 停留所出発(165番バス)
13:50 清凉里前停留所到着

2010515日に撮影した動画>

<登山地図>
(動画の登り=赤 下り=青