大屯山は、忠清南道と全羅北道において共に道立公園として指定されている名山である。新羅の元曉大師は「三日間見て回っても、その場から立ち去れない山」と評し、近世になって萬海・韓龍雲は「大屯山の太古寺を見ずして天下の勝地を語る事なかれ」と語った。
大屯山の元々の名は「ハンドゥム山」であった。「壮大な奥山」「巨大な岩塊の山」という意から呼ばれていた名で、この「ハンドゥム」という固有語を漢字に当てはめる際、「ハン」には壮大、巨大という意から「大」を当てられたが、「ドゥム」にはその意味にふさわしい漢字がなく、また同じ音の漢字もなかったため、「ドゥム」の音に最も近い「屯(ドゥン)」が当てられた。大屯山の西方、論山の住民は現在も大屯山を「ハンドゥム山」と呼んでいる。
韓国には、金剛山の絶景に似ているといわれる、数多くの「小金剛」がある。その中でも、「最も金剛山らしい山」を選んでみよと言われれば、断然大屯山である。もし金剛山にいる人を一瞬にして大屯山に移動させたなら、彼は山の外に出るまで、自分がずっと金剛山の中にとどまっていると錯覚を覚えてしまうであろう。大屯山の奇岩峰群はそれほど存在感と景色の美しさがずば抜けている。このように並外れた景観を持つことから、大屯山の完州側は1973年に早々と道立公園に指定された。忠清南道の論山郡にもまたがっている大屯山は、論山側でも1980年に道立公園として指定されたが、金剛山の一部分に似ている数多くの奇岩峰は完州側の斜面に密集しており、景観は完州側のほうが秀でている。将軍峰(チャングンボン)、王冠峰(ワングァンボン)、七星峰(チルソンボン)、双刀岩(サンカルバウイ)など数多くの奇岩峰の間を縫ったり、また、奇岩峰の頂を踏んだり一回り周回したりもできる大屯山の探勝は全国的な人気を得ている。
山腹まで架けられたケーブルカー(ロープウェイ)[1]、そして奇岩峰の間に架けられた雲橋(クルムダリ)[2]により、さらに多くの人々を呼び込んでいる。純粋に自然を楽しみたい登山者にとってはロープウェイと雲橋が多少目障りではあろうが、とはいえやはり完州郡雲洲面(ウンジュミョン)山北里(サンブンニ)の集団施設地区~雲橋~摩天台(マチョンデ、山頂)~七星峰展望台~龍門谷(ヨンムンゴル)を結ぶ周回コースは、大屯山の中心的な絶景をあまねく貫くクラシックルートとしてその人気に変わりはない。
論山側、特に山頂から北西方向の水落沢(スラッケゴッ 別名クンジゴル)の斜面には、完州側(東方向)の斜面のような奇岩峰はない。しかし、岩稜筋に直接取り付き、山頂に向かって登っていく醍醐味は格別である。そのため近頃は、大屯山を東西に行き来する登山客も増えつつある。
白頭大幹[3]縦走に引き続き、正脈[4]縦走がブームとなっている昨今は、山頂東側の梨崎峠(ベティジェ)を起点とし落照台(ナッチョデ)~摩天台~825.7m峰~息切れ峠(カルタッチェ)へと繋ぐ大屯山内の錦南正脈[5]縦走をする登山客もことのほか目立つ。この錦南正脈を成す稜線の中で、摩天台~825.7m峰区間に続き南下する双刀岩尾根はまさに大壮観である。
<主な登山コース>
1.
集団施設地区~摩天台~龍門窟(ヨンムングル)~ロープウェイ~集団施設地区
2.
集団施設地区~摩天台~落照台~龍門窟(ヨンムングル)~ロープウェイ~集団施設地区
3.
集団施設地区~摩天台~825.7m峰~玉渓川(オッケチョン)
4.
集団施設地区~摩天台~息切れ峠~水落沢
<その他>
*
大屯山ケーブルカー(ロープウェイ)は午前9時から20分間隔で運行。☎063-263-6622
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完州大屯山管理事務所 ☎063-240-4560~1
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大屯山観光ホテル ☎063-263-1260
<月刊「山」 全国名山地図帳解説より>
[1]下の動画の7:35~8:40。
[2]下の動画の2:10~2:30。
[4]正脈(チョンメッ) 白頭大幹から伸びた支山脈。朝鮮半島に13の正脈がある。
<2011年8月30日に撮影した動画>
<登山地図>
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