イエレンは「ドンウォーリー」、我々は「ウォン高ウォリー」

「イエレン議長が市場に投げかけたメッセージは、一言で言えば『don't worry, be happy(心配ない、大丈夫)』だ。」

去る618日(以下現地時間)に行われたジャネット・イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長の記者会見以降、NYダウ平均株価が20日まで史上最高値を更新し続けたことに対し、ウォール街の専門家の一人(キングスビュー・アセットマネジメントのポール・ノルテ副代表)が発した言葉だ。

ウォール街が「サンキュー、イエレン」と声を上げるほど、イエレン議長は記者会見において市場の期待以上にハト派(穏健派)的な立場を表した。米国経済を楽観視しながらも、当分の間、超低金利を維持すると発言した。さらに、市場が注目している金利引き上げの時期について議長は「必要時には金利引き上げをするが、出口戦略に慎重を期す」と明かした。

加えてイエレン議長は、現在の株価はバブルではないとまで言い切った。S&P500指数やダウ指数が相次いで史上最高値を更新し、投資家ですらこれらに対する警戒心を持っているにもかかわらず、である。ここまで来ると、「FRBが今後も景気浮揚策を進めるから、心配なくNY株に投資を」というウォール街の解釈が自ずと出てくるのも無理はない。

イエレン議長とFRBが米国景気を楽観視しているにもかかわらず超低金利基調を維持する意を明らかにしたことにより、韓国や新興国は今後通貨政策と為替政策を運用する際に相当な困難を強いられるものと見られる。輸出主導の韓国経済に関して言えば、ウォン高により早速暗雲が立ち込めている。

623日も米国製造業指標や住宅指標が好調を示したものの、NY市場においてドルは引き続き売られた。今後も上下動はあるだろうがFRBの超低金利政策と共に当分の間ドル安が続くだろう、というのがウォール街のおおよその見立てだ。

したがって今後特別な変化要因がない限り、ウォン高の進行速度は今後もさらに速くなる可能性が高いと見られる。ドルウォン相場において1ドル=900ウォン台、いや800ウォン台が市場の予想よりもさらに早く来ることもありうる。

為替相場の予想自体が困難なことではあるが、筆者がこのように速いウォン高進行の可能性について言及するのは大きく二つの理由がある。それは「経済に関連する米国の不寛容」と「為替相場に対する韓国民の認識変化」だ。

2008年の金融危機以降、米国は、少しきつい言い方をすれば「自分さえうまくやりくりできたら他国はどうなっても構わない」経済政策を取っている。また、米国企業及び米国経済に否定的な影響を及ぼすものに対しては、保護貿易主義と批判されるほどの対応をしている。

バラク・オバマ米大統領が昨年8月、サムスン電子の特許を侵害したとして米アップルの製品の輸入を禁止した米国際貿易委員会(ITC)の命令に対し拒否権を行使したのが端的な例である。

FRBは世界の中央銀行ではないと言明しバブル論議が膨らむ中でも米国市場を支持したり、また米国財務省が何かにつけて経常収支黒字国の韓国や中国などにより行われている為替介入の問題について物申したりするのも同様の筋道で解釈できる。

このような状況において、ウォンの切り上げを望む韓国民が次第に増えつつあるのも今後の為替政策に相当な影響を及ぼすものと思われる。崔炅煥(チェ・ギョンファン)経済副首相候補者が先日記者たちに「国民の立場からすると、ウォン高になれば購買力が向上し所得が増えるという効果もある」と明かしたのも、このような韓国民の認識変化を反映したものと見られる。

日本の場合を見ても、1985年のプラザ合意後からバブル崩壊後の長期不況までは国民の大多数が円高を喜んで受け入れたという。

ウォン高の進行が今後さらに速くなれば、1人当たり国民所得3万ドル時代もさらに早く訪れるであろう。が気がかりなのは、日本が1990年代初頭に3万ドルを突破した後「失われた20年」を迎えたように、我々も「うわべだけの3万ドル時代」を迎えることにならないか、という点である。1980年代末から90年代初頭にかけて日本が経験した「円高→人為的な景気浮揚→花火のような資産バブル→失われた20年」の二の舞を我々が演ずることのないよう願うばかりだ。
<韓国マネートゥデイニュースより>

【追記1】 
2014年7月現在の円ウォン相場(100=1,000ウォン前後)は一見すると円安ウォン高のように見えるが、韓国当局の為替市場への闇介入により人為的に操作された過度のウォン安がここに来てようやく是正されたに過ぎず、長期チャートから見て真に円安ウォン高と呼べるのは100=800ウォン台以下になってからである。

【追記2
20147月現在、またもや韓国当局によるウォン売りドル買い→ドル売り円買いの為替介入が実施された模様である。米国やIMFからの度重なる批判にもかかわらず為替操作を繰り返す姿勢には辟易するが、日本が民主党政権下で1日に8兆円もの円売りドル買い介入をしてもその効果はわずか数日だった事実からも、今後もウォン高に向かう中長期的なトレンドに変わりはないだろう。

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