金井山(クムジョンサン/877.7m/釜山市・慶尚南道)

港町釜山の市民にとって、金井山は単なる「山」という存在を超えた意味を持つ名山である。海のない釜山を想像できないように、金井山のない釜山もまた想像できないと彼らは言う。

洛東江と水営江(スヨンガン)の分水嶺となっている金井山は、標高こそ800mをわずかに超える程度であるが、海の近くにそびえているため相対的に高く見える上に、花崗岩層の奇岩怪石や秀麗な山峰、様々な谷の姿、そして由緒ある山城に古刹など、大いなる山としての条件を全て兼ね備えている。

また護国の山でもあり、国内最大の山城である金井山城(史跡第215号)や梵魚寺などでも名高い金井山は、朝鮮半島の根幹を成す山脈の一つ、洛東正脈[1]の最南端に力強くそびえており、内陸の1,500m級の高山に劣らない格を備えた名山であると言える。

金井山の登山道は最高峰の姑堂峰(コダンボン)から伸びた主稜線沿いに、また主稜線から東西に伸びた支尾根沿いに縦横無尽に張り巡らされている。登山口もまた、温泉場駅から梵魚寺駅まで地下鉄の各駅に最寄りの登山口があり、どこからでも容易にアクセス可能である。

<コースガイド>
1.  主稜線経由、名刹探訪~温泉浴コース
金井山の代表的な寺刹である梵魚寺を起点とし、主稜線上の北門(プンムン)へ登った後、主稜線の山城沿いに進んでいく登山道が金井山を代表するコースである。名刹と山城を繋ぎ、東莱温泉へと下山すれば温泉浴も楽しむことができる。

梵魚寺周回コースは、梵魚寺から姑堂峰まで登り下りする最短ルートである。山頂から北へ向かい最初の分岐を北東方向の尾根へ入ると、青蓮庵(チョンニョナム)を経て下山できる。ただし、山頂から下る際の岩場には要注意。所要時間、約3時間。

東莱温泉周回コースは、金剛植物園入口から山城道路を進み、途中の脇道から大陸峰(テリュッポン)の南稜に登るルートと、山城峠(サンソンコゲ)もしくは東門(トンムン)まで登り、大陸峰~南門(ナンムン)~休定庵(ヒュジョンアム)を経て金剛公園へ下るルートがある。所要時間、約3時間。金剛公園まではケーブルカー(ロープウェイ)も利用できる。金剛ケーブルカー☎051-552-1762。金剛公園☎051-555-1743

2.  山城一周コース
東門を起点とし、義湘峰(ウィサンボン)~元曉峰(ウォニョボン)~北門~姑堂峰~石門(ソンムン)~釜山教育院~中城石門(チュンソン ソンムン)~山城集落~上鶏峰(サンゲボン)~南門~大陸峰を経て再び東門へ戻る周回コースは、山城沿いに金井山のありのままの姿を楽しめる。所要時間、約6時間。

3.  南北縦走コース
山塊およそ北端にあたる梁山市東面(トンミョン)石山里(ソクサンニ)癸石(ケソッ)集落のテジョングリーンパークアパートを起点とし、将軍峰(チャングンボン)を経て姑堂峰~東門~南門~万徳峠(マンドッコゲ)までの縦走コースであるが、体力に自信があればその先の白楊山(ペギャンサン)まで縦走することもできる。所要時間、約7時間。

4.  洛東正脈区間縦走コース
金井山は洛東正脈の最南端に位置する主要な山である。この正脈区間縦走コースは、釜山と梁山の境にある地境峠(チギョンコゲ)を起点とし、鶏鳴峰(ケミョンボン)を経て姑堂峰に登り(約3時間)、主稜線沿いに万徳峠もしくは白楊山まで縦走する(約8時間)。

5.  湖浦コース
地下鉄2号線の終点湖浦駅の地下トンネルを抜けたら林道沿いに進み、調和のとれた美しい岩稜へと続く姑堂峰西稜を登るルートと、湖浦駅から梁山方面へ約1㎞の距離にある架山里(カサルリ)架山集落の金井庵(クムジョンアム)付近から陸山尾根(ユクサンヌンソン)沿いに進み、姑堂峰北稜へと登るルートがある(所要時間、約1時間30分)。主稜線に登った後は、一般的に姑堂峰~南稜へと縦走する。
<月刊「山」 全国名山地図帳解説より>

[1]洛東正脈(ナクトンジョンメッ) 太白山脈の九峰山(クボンサン)から南方へと分かれ、釜山の多大浦(タデポ)没雲台(モルンデ)へと至る山脈。

2011325日に撮影した動画>

<登山地図>
(動画の登り=赤 下り=青

0 件のコメント:

コメントを投稿